墓場覗き

「なあ、ペオルよ」
「何だい、子牙しが?」
 二人の男たちがある夫婦を観察している。
「お主は世間では人間嫌いだの、女嫌いだの、結婚制度懐疑派だのと言われておるが、あの女はお主のそういう意識をますます強めるな」
「うむ、確かに。下手すりゃ、どこぞやのメジャーリーガーの嫁だった女よりタチが悪い」
 夫はいわゆる「3高」の男で、妻はお嬢様育ちの美人専業主婦。いかにも仲睦まじい才子佳人の夫婦に見えるが、実はこの妻に秘密があったのだ。
「仮に旦那の方がゲイならばバレるだろうが、女の場合は『受け身』に徹していればバレぬものらしいな」
「なるほど。それに、同じ女が相手ならば、単なる女友達だとごまかせるな」
「ノンケの女だって、『男は財布』だと割り切っている者は少なからずおる。誰かの本にもあったな? 『カエル男』を餌食にする『タガメ女』だと」
「ふふ…。仮にこの国で同性婚が合法化されても、一部のゲイやレズビアンが『カエル』と『タガメ』になってしまうだろう。一部の異性愛者は同性愛に対して『純粋』などと幻想を抱いておるけど、それはあくまでも幻想に過ぎない」
 妻は「女友達」とのデートに出かけ、夫は萌え系アニメのDVDを観ている。この夫もまた、『女は家事ロボット』だと割り切っている。
 しかし、そのお互いの「割り切り」のおかげで、かえってお互いに対して余計な期待を抱かず/抱かせずにいられるのかもしれない。
「さて、行こうか。この話、ゼウスの嫁に聞かせてみたいなぁ~。さぞかし反応が見ものだろうさ」
「なるほど、ああいうオバサンこそがからかい甲斐があるね。下手な人間の『フェミニスト』の女より、ずっと」
「次は男同士や女同士のカップルを覗き見するのも面白そうだな。腐女子連中の幻想をぶっ潰すのも一興だ」
「私には分からないねぇ…。ノンケの女が腐女子とやらになるのは。自分はノンケの女という立場にアグラをかきながらも、高みの見物でイケメン連中のカップリング妄想に浸るとは、ギルガメッシュとエンキドゥの『友情』に嫉妬したイシュタルとはエラい違いだ」
 二人はこの家から退散した。さて、次はどこに行こうか?

 おっと、言い忘れた。ちなみに二人のうち年長の方は太公望呂尚りょ しょう(字は子牙)、若い方は魔神ベルフェゴール(バール・ペオル)である。