私は以前、mixiのアーサー王伝説コミュニティで「キャメロットの宰相にふさわしい歴史上の名政治家は誰でしょうか?」という質問スレッドを立てたが、誰も回答を投稿しなかった。私はmixiを退会したので、その後は知らないが、どうやらアーサー王伝説ファンの多くは歴史上の名政治家に対して関心が薄いようだ。
 アメリカのケネディ大統領は生前、日本の米沢藩主の上杉鷹山を尊敬していたという話があるが、どうやらその話は怪しいらしい。その代わり、生前のケネディ氏はアーサー王伝説の愛好家だったようだ。その上杉鷹山とジョン・F・ケネディとではどちらがキャメロットの宰相にふさわしいかといえば、やはり鷹山公だろう。

 私のブロ友だったあるブロガーさんは「子貢が良い」とコメントをくださったが、この子貢という人は孔子の弟子たちの中で最も有能な人物であり、後の戦国時代の縦横家の元祖のような活躍をした。なるほど、サクソン人などの異民族対策には、子貢の外交能力がふさわしい。そもそも一介の「乙女」風情を「使者」として敵陣営に送り出すのは相手をナメているし、その「乙女」自身の立場もうら若き女性ゆえに二重に危険だ。
 古代中国では何人かの名宰相がいるが、その筆頭は斉の桓公に仕えた管仲だ。他には鄭の子産や斉の晏嬰(晏子)、秦の商鞅や范雎などがいるが、マーク・トウェイン『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』は何だか商鞅のパロディのようであり、一種のファウストものだと思う。ファウストといえばゲーテの『ファウスト』だが、あのファウスト博士がアーサーに仕えるのはランスロットよりもずっと恐ろしい。なぜなら、アーサーの王位と主役の座を簒奪しそうだから…って、そりゃランスロットと変わらんか(笑)。
 キャメロットの宰相にふさわしい資質とは、純粋に政治家としての能力だけが問題になるのではない。宮廷の有力者たちとの関係が円満でなければならない。石田三成だと、いかにもガーウェインやアグラヴェインとの相性が悪そうだからまずい。呉起や商鞅ならなおさらだ。結局のところ、ランスロットやグィネヴィアよりもむしろオークニー兄弟がこの問題のキーパーソンになるだろう。

 私がツイッターでフォローしているあるお方は「晏嬰だと円卓の騎士たちとうまく協調出来そうだ」とコメントしたが、確かに晏嬰ならば、その人を見る目とコミュニケーション能力の優秀さで、一癖も二癖もある円卓の騎士たちとうまく渡り合えるだろう。しかし、西洋の文民統制の歴史はそんなに古くはないらしいから、文官版円卓騎士団という発想自体がないのだろう。